かつて、東北の地を守るために命を懸けた男たちがいた。
郷土の誇りのために戦い抜いた優しくて強い人たち。
私たちには “正しい歴史” しか教えられない。勝者の歴史。
往々にして歴史とは力をもったものが作り上げるもの。
表の歴史、王道の歴史だけが全てではない。
勝者によって隠された歴史。
中央権力と戦い散っていった者たちの声なき歴史。
東北の地には、失われた歴史がある。
【青森、岩木山神社.東北で特に好きな場所の一つ】
時は今から1200年ほど前。奈良、平安時代。
当時日本には、大和朝廷という中央権力が存在していた。
日本統一に向け、今の東北地方に勢力圏を拡大しようとしていた。
当時、東北にはエミシと呼ばれる人たちが暮らしていた。
エミシ(蝦夷)とは何か。諸説あるがここでは一文引用したいと思う。
大和朝廷は、東北地方の中央権力に従わない「まつろわぬもの」の総体を「蝦夷」「東夷」として恐れ、さげすみ、討伐の対象としてきた。そこには中央の権力争いで敗れた人々も含まれていたが、主体になったのはエミシと呼ばれた縄文先住民である。(「蝦夷・アテルイの戦い」久慈力著,p.39)
かつて東北地方には華やかな縄文の文化が栄えていた。
【三内丸山遺跡】
東北には縄文の文化を受け継ぐ民が暮らしていた。
【三内丸山遺跡の大型住居跡】
争いを好まない人たち。中央権力である大和朝廷から見れば、エミシの住む土地は搾取の対象。征服すべき場所。
エミシは獣であり、人間以下の存在とみなされていた。ここで一つの構図が出来上がる。
“進んだ文化を持つ大和朝廷” が “野蛮な縄文民族であるエミシ” を征伐する、という構図。
つい数十年前まで世界各地で繰り広げられていた、植民地戦争の構図と同じ。
“文化人” である欧米列強が、“未開の地” であり “野蛮な人” が住む、アフリカやアジアを征服し搾取する。
大和朝廷とエミシの構図と全く同じ。大和朝廷との争いの中で、たくさんのエミシたちが日本各地に強制的に移住させられたという。(結果的に散らばったエミシが武士道の起源になったという説もある)
エミシたちは本当に野蛮な人たちだったのか。
違う。少なくとも私は違うと思う。私たちと何も変わることがない。家族や郷土を愛する優しくて強い人たち。
でも、大和朝廷から見れば征伐の対象。野蛮人。
黙っていれば戦争を仕掛けられて征服されるだけ。土地は奪われ家族は失われる。
一方的にやられるわけにはいかない。エミシの誇りのため、エミシ社会を守るために立ち上がった人物がいる。
鮮麻呂(アザマロ)、阿弖流為(アテルイ)、母礼(モレ)
もちろん、エミシの中で立ち上がった人物は無数にいただろうが、この3人は特に英雄的な働きをした。
アテルイたちの歴史は何の因果か、2017年の日本社会にも登場してくる。歌舞伎の演目として扱われ宝塚の題材として選ばれている。
【歌舞伎 阿弖流為〈アテルイ〉】 http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/31/
【宝塚 阿弖流為 –ATERUI–】 http://kageki.hankyu.co.jp/revue/2017/aterui/index.html
王道の歴史ではないにせよ、1200年を経た今でも受け継がれている歴史。
アテルイたちは何を成し遂げたのか。何を後世に託したのか。
東北日本の歴史。王道の歴史には載らない影の英雄たち。知れば知るほどアテルイたちの生き方に惹かれる。
圧倒的強者である大和朝廷に少数で立ち向かったアテルイを長とするエミシ勢力。
おそらく彼らの意志は1200年の時を経た今でも、東北の地に目に見えない形で受け継がれている。
私が初めて青森のねぶたをみたときに感じた、底知れない秘めた強さ。
もはや推測するしかないが、私には優しくて強いエミシたちの意志が込められているのではないかと思う。
まだまだ東北の歴史は探り始めたばかり。
今回は、失われた歴史、エミシをキーワードに東北の歴史について調べ知ったこと、感じたことを書きました。
少しずつ東北の歴史に詳しくなってきています。
アテルイやモレが何を成し遂げたのかは、また後日書きたいと思います。
※後日アテルイのことを別記事で書きました。↓
※もののけ姫に出てくるアシタカはエミシ。直近の記事で書きました。↓
(2019/5/26追記)
最後までお読みいただきありがとうございました。私の記事でエミシや東北のことが少しでも伝わったのなら嬉しいです。この記事を書いてからも、出来る限り東北を旅して本を読んで調べ続けています。まだまだ書ききれていませんが、興味がある方は他の東北やエミシの記事も読んでいただけると嬉しいです。
この記事では文章に特化して書いていますが、私は写真家でもあります。すでに東北の写真がかなりの数貯まってきています。近い将来(2019,2020年)、東北の写真だけで個展をしたいと思っております。また決まったらご案内します。
金子素直
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